1976年、西荻窪のほびっと村は全国のコミューン運動やヒッピーカルチャーの実験的な拠点として誕生しました。高度経済成長の価値観に逆行する「もうひとつの生き方」を実践と言論で提案する場所——それが、オーガニック野菜を専門とする「長本兄弟商会」、ベ平連運動の流れをくむ喫茶店「ほんやら洞」と共に築きあげられました。
このほびっと村の中に誕生したのが「プラサード書店」です。サンスクリット語で「贈りもの」を意味するこの名前は、思想書や人文書を厳選する書店として立ち上がりました。わずか4坪という限られた空間でありながら、開店から数年で、売り場面積当たりの売上が日本有数と言われるほどの求心力を持つようになります。読者たちはプラサード書店に集い、カウンターカルチャーの精神と知的好奇心が交差する場所として機能していました。
後に高橋ゆりこ氏が引き継いだ時代、書店は「ナワ・プラサード」へと進化します。高橋氏の選書は「女性の身体」を中心に据えたもの。月経、出産、性愛、更年期——女性たちが語られない領域を、知識と経験をもって紡ぎ直す本たち。書店は「女性のサンクチュアリ」となり、多くの女性たちが自分自身を問い直す場所として訪れました。
プラサード書店からナワ・プラサードへ。その流れの中には、オルタナティブな社会を求める思想、女性たちの身体と知を尊重する実践、そして「贈りもの」という理念が脈々と流れていました。
50年の時を経て、2026年、同じほびっと村の場所から新たな書店が立ち上がりました。それが「プラプラブックス」です。
プラネタリー(複数の声と視点を大切にする思想)、プラサード(「贈りもの」という理念と、カウンターカルチャーの実践)、そしてプラプラ(目的なく漂う)——この三つの層が出会うとき、プラプラブックスになります。
西荻窪のほびっと村で始まったオルタナティブな実験は、決して終わることなく、新しい形で、今もなお継続しています。